北海学園大学演劇研究会まとめ~エースとの最悪の出会い~
- 1994年
森崎:ホント言えばね、僕は会えてなかったわけですよ、彼には。
大泉:2歳年が違って、俺が2浪してるから、ストレートで行くなら俺が入ってる時にはもうリーダーは卒業してなきゃいけない。
森崎:でも俺は待ったね。大泉を待った。
大泉:(笑)。
森崎:大泉と音尾が入ってきた時に、俺は「このための留年だったか」と思いましたよ。「父ちゃん母ちゃんゴメン。学費を多く払わせてしまったけど、でも俺、出会いがあったよ!」っていうふうに今は思うよ
大泉:アレなんじゃない?孫悟空が岩に閉じ込められてさ、何千年後に来る三蔵法師を待ってるみたいな。
森崎:…お前が三蔵なの(笑)?
大泉:三蔵法師が助けに来たんだ
ねえ(笑)。*1
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森崎:俺は当時5年生。去年までの演劇研究会をよく知ってるし、なんなら去年までは俺が会長だったでしょ。自分で作り育ててきたっていう思いもある。そんな俺が「新入生は何人くらい入ったのかな?」って思って「地下4」の重い扉をがらっと開けた時の光景だよ!「何だこの光景!?」と思ったね(笑)。「おいっお前!あれなんだ!?ウチの新入生か!?」と。「音研さんかもしれない」と思ったんだけど、よくよく聞いてみたら「新入部員です」って言うから。
大泉:静かに言われた覚えがあるよ。「そのスリッパはまずいなぁ。それは脱げ」みたいな。あきらかにこう、やっぱり「何だお前…生意気な態度じゃないか」っていう感じがして、あぁ、ついに怒られたっていう感じがした。
森崎:なぜ他の連中が誰も怒んなかったんだってことに怒ってたね、俺は。
大泉:誰も言えないような…誰も俺に近づくなっていうオーラを出してたんだろうね、俺は。当時音尾くんが「狼だ!」と言ってたくらいで(笑)。「なぜいつも彼はこんなにギラギラした目なんだ?」って。*2
大泉:演劇に対してはやっぱり、中学・高校と観てきた「つまらない」ってイメージがあったから。そしたら、思ってたとおりのことを始めようとするわけだよね、発声だなんだって。「やっぱりだよこの人達」っていう嫌なイメージばっかりだった。そして本当に音尾はイカさなかったね(笑)!
森崎:(笑)イカさなかったね~。
大泉:もちろん俺もしぬほどイカさなかったけど、音尾くんのイカさない顔ぶりって言ったらホントないんだよ。もちろん目も離れてて。音尾を見た時に「やっぱりこういう人が入ってくるんだな」って(笑)。音尾がすごくまたオレの演劇熱を冷めさせたね。
森崎:ひどいなぁ(笑)。*3
大泉:僕、大学時代に初めて会った時に「安田さんていい声してますね」って言ったの。
安田:僕覚えてます!覚えてます!一番最初にあなたが僕に言ってくれたことは、「安田先輩って、いい声してますね」でした。「そんなことないよ」って僕は言って、君の腹筋を押した思い出がありますよ。
大泉:(笑)
安田:「いい声になりたいかい?」といいながら、こう(笑)
大泉:そんな恥ずかしい話はいいですよ(笑)*4
安田:僕はね、最初から、すごいおもしろいヤツだと思ってて。最初に大泉が演劇研究会に入ってきたとき、ドアの横に傘立てがあってね。それに蹴つまずいて傘を倒したんですよ。その拾い方とか、微妙な間とかがおもしろくてね。*5
たとえば、新入生がコピーを取りに行かされたりするじゃないですか。僕は絶対に自分からは行かなかった。周りもなんとなく頼みづらいから、やっぱり音尾とかがすぐに行かされる。同学年のやつからは「なんであいつは行かないんだ」って言われたりもして、居づらくなって部室に顔を出さなくなりましたね。*6
大泉:「安田っていう変態がいる」って話は、僕が演劇研究会に入った頃から聞いていたんですよ。でも実際に会ってみたら、そこそこ二枚目で良い声で物静かな人でしょ。「なぜこの人が?」と、不思議に思ってた。そしたら彼、初めての飲み会、新入生歓迎コンパでパンツになって、何回目かの飲み会でついに全部脱いだんだよね。オレ、人前で全部脱いだ人を初めて見てさ。その時オレの中で自分の中でタブーが起きたというか。「出す人ってほんとうにいるんだ」と*7
戸次:最初に新入生で大泉が演劇研究会に入ってきたときは、ぶっちゃけ、早く辞めてくんないかなと思ってて。
安田:ぶっちゃけましたね(笑)。
戸次:とにかくあいつ、自分を出さなかったんだよね。まぁ彼も、2浪して大学入って色んな思いがあったんだろうけど、それがバリバリ出てたもんだから、とっつきにくくて。今じゃ考えられないけど、「おもしろくないヤツだな」と思ってた。 それで俺、「大泉ってどうなんだ」みたいな話を安田先輩にしたんだ。
安田:言ってたね、覚えてる。
戸次:安田先輩は見る目があったと思うんだけど、「いや、それは違う。すごいヤツが入ってきたぞ」と。*8
森崎:で、安田の言葉を聞いて「おお、音尾かい?」って言ったら「いや違う、大泉くんだよ」って。「何で?」って言ったら「傘立てを倒したんだよ、彼が。その時の顔がね…僕は何かを感じたなぁー」って、安田が熱く語るわけだよ、ウチで酒を飲みながら。俺は全くその面白さはわからなかったけど(笑)。*9
森崎:俺はその時音尾が面白いと思ってたんだ。高校も一緒だって聞いて、すごく可愛がってた。一緒にご飯とか食べに行って。今ではアイツ全く覚えてないらしいんだけどさ(笑)。*10
大泉:ほんとうによく覚えているのは、モリのギターだなぁ。なんとなく仲良くなり始めたのは…zo-3(ギター)?
森崎:あぁ、アンプついたエレキ。
大泉:なぜか部室に歌本がいっぱいあったんだよね、その歌本をめくりながら「次なに唄う~?」って、ギターをガンガンかき鳴らして次々唄っていってるのを見ながら「なんとなく楽しいかな?」って思い始めたんだよ。
森崎:『カラオケボックス・モリ』っていう遊びでね。やっぱり1年生はなかなか話せないわけだよ。だから話せない子の所に寄って行って、「よし、次はお前なに唄う?」って言って、1曲一緒に歌ったりとか。ホントのカラオケボックスに行く金なんかないから。*12
森崎:僕、カラオケボックスに行く金がなかったんで、よく部室でギターを弾いていたんですね。なんとなくそれは彼も遠目に見ててずいぶんと楽しそうだなと思ってたらしいんです。で、ある時「よし、大泉くんも一緒に歌おう!」って歌本をパラパラ開いて、尾崎豊か何かを私がギターを鳴らして彼が歌ってくれるっていうことをやって。何かそういったところからどんどん仲良くなっていって「面白いね、君」っていうことになって。*13
戸次:たまたま彼と一緒に小道具を作ることになり、ヤツと話すようになったのね。そしたら「戸次さん、『カリオストロの城』観ました?」って、自分が好きなシーンを再現し始めて。それが、庭師が「なんて気持ちのいい連中だろう」っていうシーンでさ。オレは「うわ、そこに目をつけるか」とグイグイ引き込まれたんだ。それから、得意のものまねも披露してくれるようになり、僕はすっかり彼のファンになってしまって。*14
思えば私とシゲは大学では先輩後輩だった。シゲが2年の時私が1年。ところがある時シゲは言ったね。「俺の基準は生まれた年だから、俺には敬語使わなくていいよ」・・・泣けたね。
(中略)
正直お互いの第一印象は最悪だった。私は私で「なんかシャラーっとしてて気 に入らねーなー」って感じだったし、シゲは演研になじもうとしない私がキライだった。それ以来かなー、私の彼を見る目が少し変わったのは。
(中略)
シゲが私を認めた瞬間は何となくわかる。どんな流れかは忘れたが、私が『ルパン三世カリオストロの城』の最後のシーン、銭形警部とクラリスとおじいさんのシーンをものまねした時じゃないかなー。 庭師のおじいさんの台詞「何と気持ちのいい連中じゃろ」で彼は僕を認め、その後『ビバリーヒルズコップ』のエディーマーフィーで・・・というか吹き替えの下条アトムでもう僕のとりこになっていた。シゲにはよく家まで送ってもらったなー。そのつど何かものまねをしてシゲにガソリン代替わりの爆笑を払っていたものだ。*16
大泉:ある時グラウンドで誰かがすごい勢いでバク転してるんですよ。最後は伸身で一回転して見事に着地して、おおっ!すごい!と見たら、それがなんと音尾だった。あの離れ目、意外とすごいぞって見直したり(笑)。*18
大泉:当時さ、俺は安田のケツに火をつけさせられて(笑)。「俺が今から(屁で)ライターの火を大きくする!」って言われて、ケツの前で火を持たされてたと思うと、やっぱり逆らえなかったのかなと(笑)。
森崎:今なら絶対やらないね…(笑)
大泉:「はいっ!お願いしますっ!」って確か音尾と2人ですげー嬉しそうに持ってた(笑)。そしたら結局、大きくなるどころか風で火が消えたんだよ。「き、消えました!安田先輩!」って(笑)。*19
- 6月
音尾:地方公演とか行くようになったじゃない?その中で自然と5人一緒にいたじゃない。たしかリーダー風邪引いたことあるよね、地方公演中に。
森崎:うん、すごい風邪引いた。
音尾:ものすごい風邪を引いて寝込んで。その時「ひどい男だなー」と思った覚えがあるの。リーダーが「あぁ。ポカリが飲みたい。とにかく、なんか飲ましてくれ、アイス買ってきてくれ」って言うから「じゃー俺買ってきます!」って買いに行って、戻って来たら他にもさらにまた頼まれて、「じゃそれも、行ってきます!」って行って、戻ってきたっけ「いやー、お前は犬だな!なんでも言えばやるのかお前は。犬か!?」って。
森崎:そんなひどい!
音尾:いや、言ったの言ったの。
森崎:犬は言った!お前が「ワオーン!」と言ったのも覚えてる。たしかに。
音尾:なんかひどいこと言うわーと思ったら、シゲがフォローしてくれたのも覚えてる。「いやでもね、森崎さん病気してるから、気を遣って森崎さんのためにやってくれたんじゃないっすかー。犬はないっすよー森崎さーん」って。
森崎:そんなカンジ悪い感じだった?
音尾:そう。あれ?リーダーの中では違ったの?
森崎:楽しく遊んでるつもりだった(笑)。レクリエーション気分だったんだけど。*21
大泉:地方公演で小学校を廻るじゃない。その時にちっちゃな安い旅館に泊まるわけ。楽しくみんなで飯を食うわけだよ。その頃にはもう僕は馴染んでるし、すっかり可愛い後輩になってるたから。で、安田は当時、OOPARTSの劇団員で、モリとシゲはイナダ組。そしたらさ、飯を食い終わった後に…安田って今でもそうだけど少食なんだよね。食い終わったらスーッと部屋へ上がって行っちゃうんだよ。「やっぱOOPARTSはおしゃれだよね」って(笑)。劇団のカラーが、やっぱりさ、OOPARTSはおしゃれだったし、イナダ組は泥臭かったんだよ。「やっぱおしゃれだよね〜。OOPARTSなんか食ったらすぐ帰っちゃうよねー」とか言って。で、イナダ組のシゲとモリはいつまでも食ってんだよ(笑)。ずーっと食ってて、まぁ今思えばやっぱり、俺と音尾がその二人を盛り上げてた感はある。「いやー、食ってますねぇ、イナダさんは〜」って言って。それでモリとシゲにそれぞれ俺と音尾がつくのね。付き人みたいに。で、競い合うようにみんなの残ったものを持っていくんだよ。他の音研とかが残した食いもんとか持ってきて、「先生エビがございました!」とか言って(笑)。「んー!ご苦労!!」ってその残ったのを片っ端から食ってくっていう遊びをやってたね。
森崎:その時からあったよ、そういうシチュエーションコント的なね、俺らでいうエチュード的なものが。それが面白いからとにかく食ってたな。水でも遊んだよね?
大泉:その時俺はモリについてた、付き人みたいな役だったから。そんで、モリが「大泉くん、水だ!」っていうから俺が「いかほど!?」って聞くと「こぼれるほどに!」って言うんだわ(笑)。「はっ!!」と言ってなみなみとついでくる。なみなみついで、「どうぞ!」って言ったらモリがそれをもの凄い勢いで、ほとんどこぼしながら飲む(笑)。っていうのを毎日やってたからな。
森崎:毎日やってたな〜。*22
森崎:めちゃめちゃ可愛がってた。で、その地演だったね。「あんたたちは「なっくす」だ」って言われたの。こいつらが1年で入ってきて、俺らととにかくそんな遊びをしてね。飯を食い終わった後は、ミーティングをしている隣の部屋で遊んでた。
大泉:5人が一つの部屋に集まってね。そんでもうとにかく俺がやみくもにいろんな先輩の悪口を言っていくわけ(笑)。ただただ悪態ついて、この人達はゲラゲラ笑いながら、俺に枕投げて怒ってるだけだった。「失礼だろ、お前!」って(笑)。その怒られるのがまた可笑しくて、もういろんな先輩をおちょくって遊んでたんだね。それで一気に仲良くなっていった覚えがあるな〜。*23
安田:とにかく、貶し上手なんですよ。ひどい誹謗中傷を僕に浴びせるんですけど、それが死ぬほど笑えるんです。全くムカつかない。もう、ゲッタゲタ笑いますね。しかも彼は、ちゃんと相手を見てそういうことを言いますからね。本当に嫌いな人間や弱ってる相手に対しては、絶対にそういうことは言わない。だから彼から誹謗中傷されてるうちは、僕自身も元気なんだなぁって思えるんですよ。そういう意味では僕、彼に対してはちょっとしたマゾですね。何か言われるたびに、ゾクゾクゾクッ!「来た、来た、来たぁっ!」って思いますもんね(笑)。*24
戸次:昔よく大泉が言ってた、「大抵のやつは俺にダメージを与える悪口を言えない。だけどお前らは唯一、俺にダメージを与える悪口を言える。だから俺はお前らと付き合ってんだ」って。悪口っていうのはつまり罵倒ってことで。「面白く罵倒できるやつは周りには誰もいないからお前らと付き合ってる。で、俺はそれに負けないように自分を高めていかなきゃいけない」って。*25
森崎:そんなことを毎日やってるうちに、当時の会長に「いいから。あの5人は演劇研究会じゃないんだ。あいつらはなっくすだから」って(笑)。それが、本当に始まり。
大泉:演劇研究会のドアに『なっくす』って書いてあったんだよ。なっくすって何なんだろう?って思ってたら、それはそもそも前の年に決めた演研の愛称だったんだけど、恥ずかしくて誰も使えないんだね、そんな格好悪い名前ね(笑)。その格好悪い名前を俺たちにつけて、「あー、あれ演劇研究会じゃないから。なっくすだから」って言ってみんなでゲラゲラ笑ってた。*26
- 4月上旬
- 4月中旬
- 4月下旬
- 5月上旬
- 5月中旬
- 6月中旬
- 6月下旬
森崎:僕、彼とよく散歩するじゃないですか。
音尾:やってますね、散歩部。
森崎:あいつ、歩きながら1時間でも2時間でもしゃべってるんだ。でもそうやって話してると、ナックスはこのままだったら揺るがない、大丈夫だなって実感できる。非常に心強いですよ。*29
*1:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*2:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*3:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*5:『下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。』パンフレットより
*7:『下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。』パンフレットより
*8:『下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。』パンフレットより
*9:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*10:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*12:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*13:『Cut』2008年5月号
*14:『下荒井兄弟の、スプリング、ハズ、カム。』パンフレットより
*15:会報2004年6月号
*16:CREATIVE OFFICE CUE リレーエッセイより
*17:会報2006年6月号および『TEAM NACS TEN』より
*19:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*21:会報2006年3月号および『TEAM NACS TEN』より
*22:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*23:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*24:『LOOSER〜失い続けてしまうアルバム〜』パンフレットより
*25:会報2006年6月号および『TEAM NACS TEN』より
*26:会報2006年12月号および『TEAM NACS TEN』より
*27:『LOOSER〜失い続けてしまうアルバム〜』パンフレットより
*29:『下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。』パンフレットより